概ね良好。
箱の所々に経年による小さなシミあり。本の数ページに小さなスポット状のシミあり。
金属製プレートに“M.D”のサイン。
「マルセル・デュシャンについて」の奥付にデュシャンとロベール・ルベルのサイン、エディションナンバー。
「プロフィールの自画像」にサイン、エディションナンバー。

版元: Éditions Trianon、パリ

フランスに生まれたマルセル・デュシャン (1887 - 1968) は、1923年、1915年から携わってきた《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(1915 - 23)、所謂《大ガラス》の制作を中断し、その後、第二次世界大戦を挟み制作活動から遠ざかる。彼が後半生に残した数少ない作品は、遺作《1. 水の落下、2. 照明用ガス、が与えられたとせよ》(1946 - 66) とその関連作品、および《大ガラス》のためのメモ等の複製を収めた《グリーン・ボックス》(1934) や自作のポータブル美術館《トランクの箱》(1941) などのボックス作品に要約される。
本作品《Eau et gaz à tous les étages (各階ガス水道完備)》は、1959年パリのトリアノン・プレスから出版されたデュシャン初のカタログレゾネ (デラックス版) である。122点あまりの作品複製を収めるカタログ『Sur Marcel Duchamp』はデュシャンがレイアウトを、ロベール・ルベルがブックデザインを手掛け、テキストは、アンドレ・ブルトンとデュシャン、アンリ＝ピエール・ロシェが共同で執筆した。デュシャンがデザインしたボックスに、彼のサイン入りの２点のマルチプル作品《各階ガス水道完備》と《プロフィルの自画像》、また《大ガラス》のセルロイド複製と共に収められている。ボックス表紙にマウントされ、作品名となった《Eau et gaz à tous les étages》は19世紀末のフランスのアパートに取り付けられていたステンシル製の飾り版の複製だ。ガス、水ともデュシャンが初期以来、貫いてきたテーマである。

「The Complete Works of Marcel Duchamp」Thames & Hudson Ltd、1997年、vol. II、 No. 560 (Eau et Gaz à tous les étages)、No. 563 (design for Lebel's Sur Marcel Duchamp) 参考作品掲載 pp. 814、815