- CONDITION
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全体に経年による小さな傷や汚れが複数あり。
裏の左上角に大きな割れあり。
右上角、左上角、裏の右下角に剥がれあり。
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戦後日本の前衛美術グループが次々と躍進していった1950年代。山口勝弘 (1928-2018) は、そんな50年代初頭に結成された総合芸術グループ「実験工房」のメンバーの一人として広く知られている。1981年には「イマジナリウム」という情報環境の概念を構想し、60年におよぶ作家人生の中で、絵画、彫刻、映像作品から映像のインスタレーションに至るまで多くのメディアアート作品を生み出した。
山口が脚光を浴びるきっかけとなった代表作のひとつに1952年に発表された《ヴィトリーヌ》がある。モールガラス、ガラスに描かれた画像、紙に描かれた画像の三層からなる箱型の作品で、偏光ガラスを用いることで、ガラスの屈折によって観る者の視点に応じてイメージが変容する仕組みとなっている。瀧口修造によって命名されたタイトルの「ヴィトリーヌ (Vitrine)」は、フランス語で「ショーケース」を意味し、「眼のオルゴール」と評された。
1990年代に制作された《光の彫刻 「ヴィトリーヌ」》は、内部に組み込まれた蛍光灯によって、新たに「光」の要素が付け加えられている。後年、観客と作品双方の働きかけの中での作品鑑賞を促すインタラクティブ・アートを探究していった山口。「ヴィトリーヌ」は、作家にとっても重要な立ち位置を示すの連作であり、本作もまたきわめて貴重な一作といえる。