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非常に良好。問題なし。
右下にサイン、制作年。
作品が額に貼られているため裏は未確認。
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1936年、韓国の慶尚南道に生まれた李 禹煥(リ・ウファン)は、戦後、最も影響を及ぼしたアジア系アーティストの一人として広く認識されている。1956年に来日し、日本大学で哲学を専攻する傍ら日本画を学んだ。1960年代後半に多摩美術大学の齋藤義重教室を中心に起こった「もの派」の主要メンバーの一人として精通している。石、木、土や鉄といった自然素材にあまり手を加えない状態を作品形態として表現した同派の運動に対して、その理論を提示することで、同派の基盤を支えてきた。季の芸術実践には、先行する西洋近代思考の流れに対する東洋的な視点が強く反映されており、世界のありようをあるがままに受け止めることで、その物との間の関係、物と場の関係、はたまた観る者との関係といった哲学的見地の探求に一貫している。代表作として、場であるカンバス内に身体性の痕跡を残した《点より》《線より》、《風と共に》や、<関係項>シリーズなどが挙げられる。
本作品《Untitled》は、1995年に制作されたもので、紙の中心辺りにガッシュの一筆が配置されている。李は、同時期に、《昭応》という作品を発表している。同作品は、素材の上に、一筆の液体を配置するという余白を生かした作品である。この時期に、李は同様の余白を応用した作品を数多く制作しており、東京画廊にて個展を開催するなどしている。本作は、現在に至るまで継続している季の実践において、その過渡期に制作された典型的な作品である。