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非常に良好。問題なし。
右下にサイン、制作年。
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石川県出身の在日コリアン2世の文承根 (ムン・スングン) (1947-1982) は、1960年代ごろから独学で美術表現を開始し、関西を拠点に活動をしてきた。1968年に具体美術協会の吉原治良の推薦により具体展に出品。1969年、弱冠22歳で第5回国際青年美術家展で美術出版社賞を受賞する。1977年には、第1回日本現代版画大賞展でアルシュリーブ賞を受賞。1982年に惜しまれつつも癌で逝去するまでの短い作家人生の間に、絵画、版画、彫刻作品まで多彩な作品群を生み出した。若き秀才の評価は、死後40年以上が経過する現在も継続的に行われている。
生前「現実の自己存在を離れた芸術は本物ではない」と語ったように、その作風からは、一貫して作家自身の社会と真摯に向き合う姿勢が見受けられる。文の代表的な作品シリーズとして、白い油絵、ろうけつ染の技法から着想を得た水彩画、小さい鉛が埋め込まれた球状のオブジェなどがある。これらの作品には、共通して反復が用いられており、作家自身が抱いていたであろう自身のルーツに対する葛藤、人生観や美術観が反映された幻想的な思索の痕跡とも言える。
白いキャンヴァスに白い絵の具が縦横に端的に重ね塗られた本作品は、1980年に制作された73×60cmの絵画作品で、作家人生の終盤に描かれた連作の一つである。