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非常に良好。問題なし。
左下にサイン。裏の左下にサイン、タイトル、制作年月日。
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難波田龍起 (1905 - 1997) は、1920年代に詩人にして彫刻家の高村光太郎に出会い、教えを受け絵画の道を志すことになる。文学と哲学に興味を持った若き難波田は、古代ギリシャの芸術に触発され、その彫刻などのモチーフを取り入れた具象絵画などを戦前まで制作。戦後の1950年代初めより次第に画面の抽象化を強め、1950年代半ばには自律的な線と色彩の構成による独自の叙情的な抽象絵画を生み出した。70年以上のキャリアを通して自身の内面との対話の中から抽象表現の可能性を追求し続けた難波田は、1996年に文化功労者として表彰され、没後の2005年には東京オペラシティアートギャラリーにて生誕100年記念の回顧展が開催された。
本作品《赤の詩》(1969) は、難波田が抽象絵画を行為として捉えた絶頂期の時代に制作。赤を主に青、黄、緑といった力強くも暖かい色彩の交差と幾重にも重なる旋律のような線の重奏はまさに詩情に満ちている。
「抽象美術は人間の空想力や想像力を取り戻すものである。そして目に見える現実にのみ執着する人間の心を、もっと広い世界、目に見えない世界へ開放する」。
(難波田龍起『古代から現代へ』造形社、1970年、p.19)