良好。
裏のマット上部にサイン、制作年

アメリカ人アーティスト兼キュレーターであったマイク・ケリー (1954-2012) は、その学際的な芸術的実践から、過去50年間で最も影響力を与えた芸術家の1人として称えられている。ケリーは、カルフォルニア芸術大学修士課程を1976年に卒業。前衛的な教えに強く影響を受け、階級に対するコメントやポップカルチャーを通して、文化的・社会的な反抗を封じ込めた作品を制作してきた。1990年代、ケリーは、自身の作品を通して抑圧された記憶と幼少期のトラウマの概念を探究し始める。この時期に発表された作品は、遊び心のあるおもちゃを想起させるイメージを用いながらも、不吉な色合いを帯びている。このシリーズを通して、ケリーはアメリカの教育システムを、真実と虚偽を信じるように洗脳し、若者が確実な知識を身につけることを妨げる、一種の精神的虐待の一形態として観察していた。ケリーはこの共有経験が子ども時代の国民的抑圧をもたらしたと考えていた。

トランプカードを彷彿とさせる《Untitled #4》には、ネイティブ・アメリカン風のフェティッシュな衣装をまとった性的ドールのような女性の姿が描かれている。これは、アメリカ社会におけるネイティブ・アメリカンの歴史抹殺に対するコメントを表している。この衣装は、子供向けの着せ替え人形などで見られる、歴史性を欠いた文化的にも無神経なネイティブ・アメリカンの服飾表現を包含している。ケリーの作品は、子供時代に権力構造を植え付ける存在、特にあどけなく無垢な容姿をしたオブジェクトへとしばしば疑問を投げかける。本ミクストメディア作品は、政府機構によって操作をされる幼少期の経験を共有することで、なかなか語られることのない複雑なトラウマを露呈しているのである。

Wako Works of Art (東京)