非常に良好。
裏の左上にサイン、タイトル、制作年。

1997年生まれの現代アーティストの長島伊織は、2020年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業後、国内各地で作品を発表し続ける気鋭の若手アーティストである。印象派の絵画との出会いがきっかけとなり、絵を描き始めた。ミヒャエル・ボレマンズなど具象画のペインターからも影響を受けており、過去の具象画の伝統と向き合いながら、現代の文脈へと落とし込む。その作風は、<見えないもの>を題材に記憶化した想像を具象画として描き起こす。作中にしばしば用いられる、抽象との間にあるかのような油絵特有のストロークは、観る者の感情を揺さぶる。

本作品《Whisper》は2021年に描かれた。作品のモチーフとして、ポップアートのアイコン、アンディー・ウォーホルと、彼のファクトリーガールであったイーディ・セジウィックが話しているシーンが描かれている。ボヤがかかった顔のストロークは、これらのモチーフのアイコンとしての象徴よりも、囁く行為へと目が惹くように差し向けられており、そこには長島自身も想像しながら描き出したであろう物語の連想が情景として現れるのである。