非常に良好。問題なし。
裏の上中央にサイン、タイトル、「9th. MAR」の日付。

東京のコンテンポラリーアートシーンにおける主要な人物の一人である日本人アーティストのTIDE。2019年にモノクロの世界の中心にネコの主人公を据えたアクリル画〈CAT〉シリーズを描き始める。作品は、幼少期とノスタルジーをテーマとしており、CATは主に子供部屋など慣れ親しんだ家庭空間の中で、作家自身や鑑賞者の感情を代弁するものとして描かれている。TIDEの作品は、黒と白、光と闇、夢と現実、親しみやすいものと不気味なものなど、一見センチメンタルな主題とは相反する複雑な二面性を表現している。また、絵画は2次元と3次元で表現され、漫画のようにフラットに描かれた有機体のCATと、超現実的な描写で描かれた無機質なモノとが対照的である。ロイ・リキテンシュタイン、漫画家の水木しげる、身近な日常を描くアンティミスム(親密派)など、彼の作風に影響を与えたアーティストやムーブメントを参照しながらも、彼独自の芸術的センスが発揮されている。
本作品《Beast》は、〈CAT〉シリーズの初期作品で、2020年にロンドンのRamp Gallery (現Ojiri Gallery) で展示されたものである。彼の絵の多くと同様に、眉をひそめながら露出した爪で柔らかい枕をつかんでいる猫の表情には緊張感が漂う。また、斜めに掛けられた絵、破れた布、壊れて傷ついたベッドフレームなど、全体的に不穏で混沌とした雰囲気が漂っている。

「STRANGER THINGS」2020年4月2日 - 5月14日、Ramp Gallery (ロンドン)