- CONDITION
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非常に良好。問題なし。
作品がマットに貼られているため裏は未確認。
- DESCRIPTION
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幼少期から長谷川等伯らの表現に魅了された村上友晴 (1938 - ) は、とりわけ木炭の持つ表現の可能性に興味を抱いた。東京藝術大学在学中、当時の日本画の技法に反して、顔料と油絵具を調合した独自の「黒」の色材を考案。1964年にはグッゲンハイム国際賞展への招待出品に田中敦子らと共に抜擢され、国内外から注目を浴びると共に、ニューヨークでのアメリカの抽象表現主義との出会いが転機となり、絵具を厚く塗り重ねる洋画の技法を通して自身のイメージする理想の「黒」を追求していく。また1979年にはカトリックに改宗し、制作のリズムを修道院の生活に倣うなど、日々の積み重ねで形成されたその結晶が現すものは、祈りという行為に類似する神聖な精神性への追求とも享受できる。
一見すると黒やそこから微かに覗く赤など色彩が画面全体を覆うシンプルな手法にみえる村上の作風だが、実は作品媒体によって画材やその配分量を調整するなど繊細かつ巧妙な手技の結実である。キャンヴァスでは木炭の粉末と油分の少ない油絵具を調合しパレットナイフで塗り込んでいく手法を応用するが、本作のような紙の作品ではアクリルと油絵の具を相互に塗り重ねる手法を用いている。またアクリルは画筆、油はナイフで塗ることで双方の絵の具の持つ相違を活かし、奥行きのある画面を構成していく。
本作品《Untitled》は、1986年から1987年にかけて制作された作家の代表的な漆黒作品である。村上は1987年にアメリカ、サンタモニカのジェームス・コーコラン・ギャラリー にて個展「村上友晴 紙作品」を開催しており、本作は同展にて発表されたものである。
- PROVENANCE
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James Corcoran Gallery (サンタモニカ)