- CONDITION
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概ね良好。
全体的に経年によるごく僅かな色ヤケ、四隅に僅かなあたりあり。
作品裏はマットに直接貼り付けられているため確認できていない。
- DESCRIPTION
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ジャン・ティンゲリー (1925 - 1991) は、スイス、バーゼルの美術学校在学中にダダイズムの影響を受ける。1950年代にパリに拠点を移し、機械がデッサンをおこなう《メタマティック》シリーズに代表される廃物をよせ集めてモーターで作動させるキネティック彫刻の制作をはじめる。
本作品は、高輪美術館 (後のセゾン現代美術館) 設立に関わった森口陽が、ミュージアム・ピースの制作をティンゲリーに依頼した際に、音楽機械作品《地獄の首都 No.1》(1984) の下絵として送られたものである。この時期はティンゲリーにとっての転換期と重なり、それまでのユーモラスな作風と訣別し、内なる精神性を追及していく彼の心境の変化は、グリューネヴァルトの三連祭壇画へのオマージュ作《ポーヤ (ハイ・アルター) 》(1982 - 84) に顕著に表れている。
《地獄の首都 No.1》(1984) は、横幅8メートル、高さ3メートルのメタルフレームに隙間なく配置されたジャンク類、さらには動物の頭蓋骨までが不協和音を発する大作である。その下絵となる本作品は、絵の具、テープ、メッシュのコラージュからなり、無秩序な印象を与えながらも、幾重にも重ねられた描き込みにティンゲリーの偏執的な気質がみてとれる。ティンゲリーが生涯に渡り反発した生産と廃棄を繰り返す物質文明が地獄だとすれば、本作品は皮肉をこめてそれを祀った祭壇のための習作といえる。
- PROVENANCE
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森口陽コレクション、長野
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