概ね良好。
経年による僅かな色やけ、波打ち、右上角に黒い点、左側に薄い点状の茶色のシミあり。
裏面に全体的な色やけと縁沿いにテープ残りあり。
裏の左下にサイン、右下にエディションナンバー、パブリッシャースタンプ。

版元: Castelli Graphics and Multiples, Inc.、ニューヨーク

1972年アメリカの大統領リチャード・ニクソンは中国を初訪問し、中華人共和国の最高指導者毛沢東と握手を交わし、戦後20年間にわたる敵視政策の転換を誓い米中共同宣言を発表した。本作は、そんな歴史的な年にアンディー・ウォーホルが発表した10枚のシルク版画がセットになった作品「Mao」の一部である。マリリン・モンローなど数々のセレブリティのイメージを作品に取り入れてきた作家にとって、当時の政治の渦中的な存在であり権力的象徴でもあった毛沢東をイメージとして起用することは、彼の作品に常に存在した名声と風采という要素を満たす存在であったことは間違いない。本作の元となった原画は「毛主席語録」から入手している。また、60年代のウォーホルはオリジナル絵画を発表した数年後に版画作品を発表するのが通例であった。それは版画制作の概念とオリジナル作品間にある繋がりは必ずしも直線的なものではないということを示唆するためでもあった。しかし本作はその慣習を破り、版画とオリジナル作品は同年に発表された。また版画においては彼の後のスタイルのベースとして定着するカジュアルな手書きのアウトラインを初めて作風に導入するなど、本作はウォーホルの作家人生においても重要な作品のひとつだと言えるだろう。

「Andy Warhol Prints: A Catalogue Raisonne 1962-1987」、Distributed Art Pub Inc; Revised、Expanded edition、2003年、p.83、II.94