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良好。作品の経年によるキャンバスの四角と縁沿いにスレや絵の具の剥離があり、ところどころに絵の具のひび割れと汚れの付着があり。裏の左上にサイン、
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70sアンダーグラウンドの昇華がもたらした、現代アートシーンのターニングポイント
近年、様々なメディアよりストリートアートの先駆者、レジェンドと謳われるようになったFutura2000ことレナード・ヒルトン・マクガー。1970年代より地下鉄にスプレー缶を用いてグラフィティ制作を行なっていた彼に現在その様な枕詞が付随するようになる経緯として、その表現方法が当時の他のライターとは異なる、アブストラクト(抽象)表現でのアウトプットだった点が挙げられる。それまで、具体的なメッセージやモチーフに沿ったアプローチが当たり前だったグラフィティに比べ、彼の描くものは作家個人から生み出される純粋かつ力強い、美しい表現として多くの人々の目に映った。結果、当時のアートシーンからは、その主観的及び精神表現には更なる深い世界が潜在していると解釈され、それまで違法行為でしかなかったアングラ文化にポップ・アート(大衆芸術)の側面が加わることになった。またこの事実は、60年代よりはじまった禅や瞑想に由来するカウンターカルチャーの世間への定着と、神智学からの影響よりアブストラクト・アートを生み出したワシリー・カンディンスキーの作品群とを照らし合わせても、文化背景からみて非常に興味深い出来事だった。それからのこと、80年代になると、キース・ヘリング、ジャン=ミシェル・バスキア、ケニー・シャーフらと共に、アート・エキシビションを共にするなど彼はアーティストとしての地位を確立。同時にイラストーレーターや、グラフィックデザイナーとしても自身の存在を示した。本作品はそんな彼のアーティスト飛躍期ともいえる時期に制作されたもの。大型のキャンバスを彩るFutura2000独特の心地よくもサイケデリックな画面の中には、彼独特の絶妙なブラシ、スプレーストローク、代表的なイメージ“Atoms”も見受けられる。さらに、彼がアーティストとして注目され、ストリート・アートをここまでハイ・カルチャーへ押し上げたと言われる理由は他にもある。90年代からは、自身の周りにいるグラフィティー・ライターや、当時の文化を担う人々と共通の意思を持って、個々の総和を超えるコラボレーションスタイルを築き、彼はアートという枠組みからも逸脱しようとした。自身のオリジナルブランド立ち上げをはじめ、Bape、Supreme、Undercover、NIKE、TREK、Hennesseyなど様々なブランドと手を組み、表現のフィールドはファッションやプロダクトなどにも侵食、彼のイマジネーションは様々な形に姿を変えていった。そんな彼のスタイルは、昨今の文化生産物に通ずる、お互いのアイデアを交換、視点を多様化する、個の性質を尊重しあう物づくり、つまりはクリエイティブ産業を押し上げ、イノベーションを促す環境を独自の視点で作り上げたとも考えることが出来る。現在は自身のスタジオFutura Laboratoriesを拠点に活動し、今でも尚自身の世界観をパワフルに広げ続けるFutura2000は、現代アートシーン並びに、マーケットシーンでも注目し続けるべきアーティストの一人だ。
- PROVENANCE
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個人蔵、日本