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非常に良好。
裏の右下にサイン、制作年
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1960年代から70年代のアメリカにおけるミニマル・アートを牽引した一人である桑山忠明 (1932–2023)。東京藝術大学日本画科を卒業後、1958年に渡米しニューヨークを拠点に活動を展開した。初期には、岩絵具を混ぜた塗料をキャンヴァスに裏打ちした和紙に幾重にも塗り重ねるなど、日本画の素養を基盤とした作品を制作し、1961年にはニューヨークのGreen Galleryで個展を開催。1963年頃からはアクリル絵具やワニスといった新しい素材を取り入れる。やがて金属で縁取られた枠の中に筆触を排し、赤・青・緑といった均一な色彩を用いた絵画様式を確立した。その無駄のない造形は、ミニマル・アートの文脈においてもしばしば比較・言及されてきた。
桑山は1964年に発表したステートメントで次のように記している。
「観念、思想、哲学、理性、意味、作家の人間性さえも、私の作品には一切入り込まない、そこにはただ芸術そのものがあり、それにつきるのである。」
この言葉の通り、桑山の絵画実践には作家の痕跡を徹底して排除し、「純粋な芸術」を追求する姿勢が一貫して見られる。作品はニューヨークのグッゲンハイム美術館、神奈川県立近代美術館、大阪の国立国際美術館など、国内外の主要な美術館に収蔵されている。
1960年代にはアルミニウム枠を用いたキャンヴァスにアクリル絵具を施した作品を集中的に発表し、1970年代にはキャンヴァスを円形など変形させたり、メタリックペイントを導入するなど実験的な探究を続けた。本作は、そうした桑山の代表的な〈クロスペインティング〉の一例であり、人工的で華やかなモダン社会を象徴するかのように、均質な紫の色面が強い印象を残す。生涯にわたり素材と造形の可能性を追究し続けた桑山の歩みを示す、初期を代表する貴重な典型作である。
- PROVENANCE
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タカ・イシイギャラリー (東京)






