- CONDITION
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良好。
[1] カオス*ラウンジのサイン、タイトル、制作年 裏に名もなき実昌のサイン、制作年。
[2] 裏に藤城嘘のサイン、制作年。
- DESCRIPTION
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「カオス*ラウンジ」は美術家・藤城嘘 (1990-) が2008年に立ち上げた展示企画である。2010年から2020年までは、藤城に加え、批評家・黒瀬陽平 (1983-)、美術家・梅沢和木 (1985-) の3人を中心とする“アートコレクティブ”として活発に活動した。その始まりは、インターネット、特に黎明期のSNSを通じて、50名の無名アーティスト (様々な職種のクリエイターから学生まで) が集まったカオティックなグループ展であった。「カオスラウンジ」展と、その周辺のネットコミュニティは、集団制作を含むグループ展を繰り返しながら活動を展開した。2015年には法人「合同会社カオスラ」を設立し、展覧会の企画、スペース運営、教育活動、芸術祭の自主開催、動画配信など、多岐にわたる活動を行った。現在は黒瀬と梅沢が離脱し、「カオス*ラウンジ」は藤城に帰属している。
《東海道五十三童子巡礼図》は、展覧会『TOKYO2021「un/real engine ―― 慰霊のエンジニアリング」』(2019年、TODA BUILDING) で公開された。藤城が監修する「カオス*ラウンジ」名義の大作で、複数の絵画やドローイングから空間を構成するインスタレーション作品である。中心となるのは巨大な9枚のペインティング (本作) で、15名のアーティストが参加している。本作は、会場前 (戸田ビルディング) を旧東海道が走っていることを踏まえ、『法華経入法界品』に登場する「善財童子」の逸話にちなんだ巡礼の物語を描く。また、明示はされていないが、2019年7月18日に発生した京都アニメーション放火殺人事件への慰霊の応答として位置づけられる。京都アニメーションは、現実と虚構 (アニメ) を地続きに描く表現を確立し、日本のアニメを牽引してきた。放火事件によって、虚構世界に現実の暴力 (危険物) が持ち込まれ、現実と虚構が同時に破壊された。現実の暴力によって壊されてしまった虚構を回復し、虚構と現実の関係を問い直すために、東京と京都をつなぐ「東海道」と「善財童子」が描かれている。
背景全体は藤城嘘と名もなき実昌 (1994-) によって描かれ、その上に各アーティストが様々な「善財童子」を描きこんでいる。9枚のパネルには、旧東海道を東京から京都へ遡るように、善財童子たちが祈りを捧げ、祈りの道をつなぐ姿が描かれる。残る1枚は別室に展示され、旅の終着点として、火災で消失した京都アニメーションのスタジオを光の姿として藤城が描いた。展覧会での展示終了後も各作家によって加筆され完成した。「カオスラウンジ」特有の、無数のアーティストによる合作の形式をとり、キャラクター表現を用いた美術でありながら、絵画を通じた弔いの作品でもある。
参加絵師:内田ユイ、梅ラボ (梅沢和木)、川上喜朗、ク渦群、cottolink、杉本憲相、都築拓磨、TYM344、名もなき実昌、宏美、藤城嘘、BeBe、堀江たくみ、三毛あんり、宮下サトシ、×□、moshほか
— 美術家・藤城嘘氏の提供テキストをもとにして掲載
- EXHIBITED
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TOKYO 2021 美術展「un/real engine ー 慰霊のエンジニアリング」2021年9月14日-10月20日、TODA BUILDING (東京)














