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裏にサイン、タイトル、制作年。
概ね良好だが、左右の下角と中央の下縁にアタリとスレがあり。
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戦後華々しい高度経済成長を遂げた日本産業であったが、その一方で、1960年代には大気汚染や水質汚染といった公害が影を落としていた。〈モノ派〉は、そんな西洋主義的成長へと傾倒していく時流に対し疑問を呈するかのように、未加工の物質や物体を主役として作中に登場させることで、モノを越えたところに潜む存在の開示を追求した芸術傾向である。関根伸夫の《位相-大地》(1968年) を契機に、当時の多摩美術大学の学生数名と李禹煥らを巻き込みながら、各々の芸術実践を通して展開されていった。
当時、多摩美術大学彫刻科の学生であり、同現象を起こした主要メンバーの一人であった小清水漸 (1944-) も、関根の《位相-大地》に触発されるかのように、日本文化固有の自然観を根底に、木や石、紙、土、鉄といった素材との協働関係を通して、創作行為を行なっていく。また、人間の自然的性質 (素材との関わり方) へと着目し、鉄であれば磨く、木であれば削るといった加工方法を通してその関係性を露出させる。しかし、その加工前と後を経ても、素材であるモノの本質はなんら変わりはないのである。その代表的な作品には、《垂線》(1969年)、《かみ》(1969年)、《鉄 I》(1970年)、〈表面から表面へ〉シリーズなどがある。
本作品《レリーフ ‘91-17》は、小清水が70年代後期より取り組み始めた木彫レリーフシリーズの一環で、1991年に制作された。木の表面に広がる筆の点をイメージさせる彫りと鮮やかな緑青の視覚的な盛り上がりを表現した塗りが施されている。絵画にも彫刻にも定義されないミディアム上に、双方の加工方法を用いることで、視覚的遊びが取り入れられている。小清水は、素材の保持する不変的本質を明らかにすることで、自身が70年代より探究し続ける揺るぎない実践を顕現するのである。
- PROVENANCE
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ギャラリーこうけつ (岐阜)