- CONDITION
-
良好。問題なし。
右下にサイン、制作年、ブラインドスタンプ、左下にエディションナンバー、ブラインドスタンプ。
作品がマットに直接貼り付けられているため裏は未確認。
- DESCRIPTION
-
イングランド北部の都市、ブラッドフォード出身のデイヴィッド・ホックニー (1937-) は、1960年代以降、イギリスのポップアートを牽引してきたアーティストの一人である。1964年にアメリカ西海岸に拠点を移してからは、ロサンゼルスを彷彿とさせる《The Splash》(1966) にあるような「水」の作品などが最も代表的なものとして挙げられる。彼の作品に一貫して見られるイメージメイキングは、これまでにさまざまなミディアムを通して表現されてきたが、その中でも版画はホックニーのキャリアを語るうえで、欠かせないミディアムのひとつであろう。学生時代は自ら版画を制作していたが、1970年代頃には刷り師らと共に版画を発表するようになる。
1986年には、《Home-Made Prints》シリーズの一環として《Livingroom and Terrace》をアンドレ・エメリッヒ・ギャラリーで発表する。当作品が一般的な版画と大きく異なる点として、そのシリーズ名が示すようにオフィス用のコピー機を用いた手作りのプリント作品であることが挙げられる。工房で刷り師が丁寧に制作する従来の版画とは異なり、コピー機の普及がもたらした手軽さを活用することで、ホックニー自らが印刷工程に着手。しかしここで彼は、通常のコピー機の使い方とは相反して、リトグラフと同様の印刷方法を採用する。各色をレイヤーごとに印刷することで、一見フラットにも見えるリビングルームとテラスの空間に厚みを持たせ、中と外の境目の絶妙な差異を見事に描き出している。
- LITERATURE
-
「デイヴィッド・ホックニー版画 1954-1995」淡交社、1996年、p.166、no.303