- CONDITION
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右下にサイン、制作年。
全体に経年によるわずかな毛羽立ちがあります。
右側の縁に薄い黒い汚れの付着あり。
- DESCRIPTION
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東京都生まれの現代美術家、榎倉康二 (1942-1995) は、物質を素材としてではなく主題にすることで、物の在りようや物の働きを問い、身体と物質、そしてそれらを取り巻く空間との関係性と向き合い探求した作家である。1968年に東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了し、1971年の第7回パリ青年ビエンナーレでは優秀賞 (留学賞) を受賞、その後1年間パリに滞在した。ヨーロッパで個展を行い、32歳の若さで国際的に高い評価を得る。当時、作家や文学者、美術評論家が集うサロン的空間でもあった西村画廊で1970年代後半に第1回目となる個展を開催。その後も国内外の主要な美術館やギャラリーで広く展示され、2005年には東京都現代美術館で大規模な回顧展が開催された。榎倉は、もの派の一員としても知られ、初期はインスタレーションや写真作品が多くみられたが、のちに平面や版画へと作品形態の中心を移行するも一貫して唯物的な視点を強調した。
1970年の「人間と物質」展でのインスタレーションをはじめ、伝統的な絵画からの逸脱を試みていた榎倉が、平面に回帰した本作品《干渉率 A-No.9》。支持体である綿布に押し付けられたことで広がる廃油の痕跡により、作家の直接的な時間的存在や身体性を物を通して対峙させる。誘発された肉体が物体に対峙したときに生じる緊張感が、物の背後に隠された身体性や自己概念について新たな考察の可能性を示唆する。
- PROVENANCE
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西村画廊 (東京)
- LITERATURE
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「榎倉康二 = Koji Enokura」東京画廊、1978年