- CONDITION
-
良好。
裏の左下にスタンプサインと「D-19/25」の文字。
裏面に経年によるシミが複数あり。
裏の上部と左縁にテープあり。
- DESCRIPTION
-
戦後まもない日本で活躍した数少ない女流作家の一人として知られる芥川(間所)沙織(1924 - 1966)。作家を始める以前には、東京音楽学校(現:東京藝術大学)にて声楽を学び、同学校を卒業後、48年に作曲家芥川也寸志と結婚し、子供を出産。この時期を契機に、本格的に絵画の制作を開始する。53年頃から読売アンデパンデン展やモダンアート協会展などの舞台で作品を発表していった芥川。染色という日本工芸から影響を受けながら発展していった独自の技法を用いた絵画は、当時の美術界からも気鋭の新人として注目された存在であった。その代表的な作品には《女(I)》(1955)や神話や民話をモチーフに展開した〈神話〉シリーズなどがある。
豊かな色合いのベールを纏った《緑の女》と題された本作は、抽象的ながらも幾何学模様を模った女性の肖像が描かれている。それまで専門的に絵画を学んだことがなかった芥川は、50年から猪熊弦一郎の研究所に通って油絵を、ろうけつ染めを野口道方について学び始めた。そんな作家人生の初期の段階に制作された本作は、青、黄緑、緑、茶という4色のクレヨンで描かれており、当時の美術界で異彩の表現を極めていった芥川の「女」シリーズといったその後の代表作への進化の萌芽を感じさせる。
- PROVENANCE
-
秀友画廊 (東京)