NEW 006

065
TOYOSHIMA Yasuko,1967 -
豊嶋 康子

安全ピン

1996-1998

安全ピン (50個)

dimensions variable Case: 7.0 × 30.0 × 7.0 cm

ケース底にサイン、制作年

ESTIMATE :
$1,300 - $1,600
CONDITION

非常に良好。問題なし。
安全ピンケース裏の左下にサイン、制作年。
アクリルケース裏の左下にサイン、制作年。

DESCRIPTION

昨年12月から今年の3月にかけて東京都現代美術館で開催された大規模個展「発生法ー天地左右の裏表」も記憶に新しい豊嶋康子 (1967-) は、日本を代表する現代美術家の一人である。その作風は、コンセプチュアル・アートに近い印象を与える側面があり、これまでの代表作品には、《マークシート》や《鉛筆》、《口座開設》、最近のもので《隠蔽工作》、《パネル》などがある。その多岐に渡る作風にもかかわらず、その芸術的実践は、制度や価値観、約束事といった枠組に対して「私」という視点から他人と自己の成り立ちの在り様を問い続ける、一貫した対峙の姿勢がある。

豊嶋は、作品に身の回りにある道具、システム、物を用いることが多い。本作品に使われる安全ピンは、1849年にアメリカ人発明家ウォルター・ハントによって発明されて以降、私たちの日常に欠かせない道具の一つとなった。豊嶋は、内側に針が収納された状態が本来のあるべき姿である大量のピンを、ベンチを用いて、さらにねじ曲げたり伸ばしたりする行為を繰り返す。この反復の動作は、あらゆる事象や既存の枠組みに対する豊嶋の対話の表れであり、それは、無意識の抵抗でもある。この行為を通して、豊嶋は、自身の中に埋め込まれたピンと自分との「韻」を覚醒させることを試みる。この対峙の痕跡は、それぞれがリズムを刻む個々の姿形へと変貌を遂げることで、顕になる。この痕跡となった作品を通して、豊嶋は、私たちが普段から当たり前のように依存する枠組みに偏在する、新たな視点の可能性を提示するのである。

本作品は、1996年に制作され、1998年にケースを伴った作品として販売された。30年にもわたる長年のキャリアの初期の段階に作られた《安全ピン》は、現在と一貫した豊嶋の芸術的実践の若き探究心が垣間見れるとても貴重な作品である。

PROVENANCE

M画廊 (栃木)

LITERATURE

「TOYOSHIMA YASUKO: works 1990-2013」阿部出版、2017年、p. 95、no. 145

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