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非常に良好。問題なし。
右下にサイン、下部側面にタイトル。
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今夏、国立新美術館で開催された大規模な個展「宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」で記憶に新しい現代美術家の蔡國強 (1957-)。中国の泉州に生まれた蔡は、銃声や火花が多く飛び交う抗議活動が激しかった文化大革命を経験した。火薬とコントロールされた爆発技術を取り入れた革新的な作品で知られ、最も代表的なものとして、火薬を仕掛けた巨大な風船で吊るした高さ500メートルもの梯子を点火した《Sky Ladder》(2015) などが挙げられる。
蔡は、1986年から95年まで日本に滞在していた経験があり、代名詞とも言える「火薬」を用いた表現方法が定着したのは、この頃の経験が大きく、1991年にはP3 art and environmentにて、ビッグバンを意味する「原初火球: The Project for Projects」と題した展覧会を開催。1993年には《龍脈/万里の長城を1万メートル延長するプロジェクト: Project for Extraterrestrials No.10》で万里の長城の最西端の関所、中国嘉峪関から1万メートルの炎と硝煙の長城を出現させた。
本作品《龍之二十九》は、日本滞在期である1993年に制作された初期の火薬ドローイング作品である。爆発が導き出す偶発的な成り行きへと着眼を置き、その中にある破壊と創造の両義的な関係性の中に美を見出す。この現在にも一貫する蔡の芸術的実践におけるその若き探究心は、燃えつきた火薬の跡とともに染みついている。
- LITERATURE
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「蔡國強といわきと彼の作品 1980-2002」ワイ・イー・エス・コーポレーション、2002年、p.91