- CONDITION
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裏の左下にサイン、タイトル、制作年。
布に貼り付けられた針金や木の枝が所々剥がれている箇所あり。
テープで補修された箇所あり。所々に点状のシミや接着剤の痕あり。
- DESCRIPTION
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菅木志雄 (1944 - ) は、1970年前後に登場した「もの派」の代表作家の一人である。1970年、京都国立近代美術館で開催された「現代美術の動向展」に、上げ下げ窓の窓を支える角材を立てかけただけの初期の代表作《無限状況》を発表。現在に至るまで、モノを人間による主観の対象や芸術表現のための手段から解放し「モノになくてはならぬもの」、即ち「モノの状態」(1979、菅)を、ありのままに可視化させるインスタレーション作品を発表し続けて来た。彼にとって、「モノをモノたらしめる状況をつくることが思考の発端である」(1979、菅)。
本作品名《平面性の線化》(1995) が想起させるのは、カンディンスキーの《点・線・面》の造形思考や、アメリカのバーネット・ニューマンのカラーフィールド・ペインティング、菅と同じく「もの派」を代表する李禹煥の《線より》などの絵画、平面作品。しかし、本作品《平面性の線化》で菅が意図するのは、キャンヴァスに線を描くことによる「平面性の線化」ではなく、「平面性の線化」という状況を「モノの状態、状況」を通して可視化させること。本作品では、布という平面的なモノは、針金という線的なモノの断片が無数に貼り付けられることで、「絶対に人の手でしかできない布の状態」(1970、菅) =波打つ皺へと変化し、一方、この布というモノの表面を見る者の視線は、この布に貼り付けられた無数の針金の断片へと誘われる。この布の下辺には、くるくると巻かれた針金の輪が取り付けられており、この布という平面に対する針金=線の増殖が、姿形を変えて、これからも続くであろう状況を示唆し、可視化しているようにも思える。
- PROVENANCE
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双ギャラリー (東京)
- LITERATURE
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「連鎖」双ギャラリー、1995年、p.15-16
「菅木志雄」読売新聞社/美術館連絡協議会、1997年、p.246、no.214
- EXHIBITED
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「双ギャラリー10周年展 LINKS SIX ARTISTS PART3 菅木志雄 + 吉澤美香 存在と境位」1995年11月4日 - 26日、双ギャラリー (東京)
「菅木志雄展」1997年12月 - 1998年6月、広島市現代美術館 (広島)、他3会場巡回