- CONDITION
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概ね良好。
各パネルの側面の所々に凹みと傷あり。各パネルの印刷の右上に白い擦れの跡のようなものがあるが、印刷した際の光の写り込みでありオリジナルのものと思われる。
各パネル裏にサイン、制作年、ドローイング。
- DESCRIPTION
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梅沢和木 (1985 - ) は、高校在学中に油絵、彫刻、陶芸、日本画の基礎を身に付け、武蔵野美術大学造形学部映像学科で映像を学ぶ。藤城嘘率いる現代アート集団「カオス*ラウンジ」の元メンバーでもある。大学在学中からそれまで影響を受けてきたゲームやアニメのキャラクター、インターネット上に無数に散りばめられる画像を拾いブリコラージュ作品を作り始め「画像」と「現実」を自在に行き来する中で生み出される「絵画」はつねに注目を集めてきた。
本作品は、梅沢が日本画家の曾我蕭白の《富士三保図屏風》にインスパイアされ制作し、福島県いわき市で行われたカオス*ラウンジ新芸術祭2015『怒りの日』に出品された大作である。幕末〜明治の廃仏毀釈運動の歴史、震災の記憶が残るいわき市の菩提院にある襖四枚をまるまる入れ替える形で展示された。東日本大震災後は、インターネット画像だけでなく現実風景も取り込み制作してきたが、本作品は、初めて日本画のイメージを注入したような構造になっている。
梅沢自身も語るように「《彼方 (かなた) クロニクル此方 (こなた)》というタイトルはあの世とこの世のクロニクル的な意味合い」(2019、梅沢) で、漫画『らき☆すた』の主人公・泉こなたと母親の泉かなたの物語がこの作品の背景にある。母親が早逝してしまった悲しみを背負いつつ、日常を過ごす主人公こなたの姿も重なり、あの世 (彼岸) とこの世 (此岸) が入れ子状となって生死が渾然一体となった世界観は、曾我蕭白の荘厳な景色と相まってどこか宗教的な体験も感じさせる。
- LITERATURE
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「梅沢和木 Re: エターナルフォース画像コア」CASHI、2018年、p.24 - 25
- EXHIBITED
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「カオス*ラウンジ新芸術祭 市街劇『怒りの日』」2015年9月19日 - 10月4日、菩提院、福島
「超えてゆく風景」2018年9月1日 - 12月2日、ワタリウム美術館、東京