- CONDITION
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全体的に経年による僅かな色ヤケがあり、作品表と側面の所々にスポット状の薄い茶色いシミあり。作品表の右上のみ経年の色ヤケがやや濃い。裏にサイン、タイトル、制作年。
- DESCRIPTION
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吉川静子(1934 - 2019)は、戦後バウハウスの拠点として知られるウルム造形大学でデザインを学び、チューリッヒを拠点に40歳を過ぎてから作品制作を始めた。吉川は、1977年のある日、描きかけのキャンバスに自然光が差し込み、白い壁に透明な色が反射されているのを発見する。吉川はこの経験を元に、ドイツの詩人ゲーテの色彩論から取った「色影」シリーズの制作を開始した。吉川は、ポリエステルまたはエポキシ樹脂で作られた「タイプ」と呼ぶ高さの異なる正方形のレリーフを正確に並べ、それぞれ向かい合った側面に補色となる薄く明るいパステル色をアクリルで塗る。ここに光が差し込むことによって、白い面に色彩の反映が模様となって現れ、時間と共に変化するのである。本作品は、1978年当時日本で最も重要な現代美術画廊のひとつであった南画廊における吉川の個展で発表された。南画廊のギャラリストである志水楠男氏と、まだ日本人の少なかったアートバーゼルで知己を得た。フォルムと色彩の三次元的な探求は、彼女が第三世代として受け継いだチューリッヒ・コンクレートのモダニズム造形と、日本的な色彩性の追求が交差する点において実現されている。
- PROVENANCE
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南画廊、東京
- EXHIBITED
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「色影」1978年、南画廊、 東京